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Labo.Web Magazine#04

Hiroyuki Tada

その場所でどんな時間をつくれるか

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その場所でどんな時間をつくれるか

多田裕之+secondbrain / 多田 裕之

分譲地
  • 暮らし
  • 設計
  • 外観

住宅と非住宅

意外に思われるかもしれませんが実は住宅も非住宅も同じ哲学と目標でデザインをしています。ひとつは「未だ誰も経験したことのない建築空間を生み出すこと」、もうひとつは「その場所でどんな時間をつくれるか」ということです。住宅と非住宅の違いは求められる機能と性能です。例えば商品を販売する店舗であれば取り扱う商品が魅力的に見えるように、飲食店であれば楽しい食事の時間を過ごせるように、そして住宅であれば住まう人の心と体が健やかに保てる場所であるように。住宅も非住宅も同じ「建築」であると考えています。

健やかであること

言うまでもなく住宅はそこに住まう人のためのものです。極端に言ってしまえば部屋中がピンク一色で埋め尽くされたとしてもそこに住む人の心が満たされるならその住宅はそれが正解なのです。(外観はまた別なのですが)ただそれだけなら建築家は必要ありません。住宅には見た目の満足感の他に重要な機能があります。それは住人の心だけでなく身体も健やかに保てる場所でなければならないということです。生物としてのヒトの体がどういう環境を求めているのか。風や光や空気や明るさや暗さ、寒さ暖かさがヒトの体にどういう影響を与えるのか。個人の嗜好を超えた、ヒトとして共通する特性をデザインに織り込んでいくことがより良い住宅につながっていきます。住宅は心身ともに癒され回復できる場所であるべきだと思っています。

環境に馴染むこと

インテリアは住人の趣味で好きなようにすれば良いのですが、外観はそういう訳にはいきません。そういう訳にいきませんと言ってもどうにもならないのが現代の日本なのですが、せめて自分が携わる建築には景観への配慮を心掛けています。ただ、京都のように参照とすべき景観が生きている場所は良いのですが、現代の日本のほとんどの地域では景観は崩壊しており、色や素材を周囲に合わせることは難しいのが現実です。しかしこの世界は良くできていて、等しく時間を経た素材は色あせたりくすんだり、苔むしたり錆びたりカビたりしてきます。日本人は古来よりそこに詫び寂びの美学を見出してきましたし、石の文化の西洋ではもっと長いスパンでエイジングした素材を愛してきました。昨今のリノベーションブームはある意味では必然だったのかもしれません。外観は完成した時がスタートで、月日を経てエイジングしていくことにより環境に馴染んでいくことが大切です。住宅地であれば隣の住宅と素材や色が違っても、エイジングする素材を選択することで時間の魔法が住宅を「商品」から「建築」へと引き上げてくれるのです。

Profile

Hiroyuki Tada 多田裕之+secondbrain 多田 裕之

1976年香川県さぬき市生まれ。
1999年金沢工業大学建築学科卒業。
独学で実務を修得し、2006年設立。現在に至る。

[所在地]木田郡三木町井戸2606-7
TEL. 087-898-2256

[受賞歴・その他]2005年藤森照信×伊東豊雄選定住宅セレクションコンペ2005年 入賞
2008年グッドデザイン賞受賞(ファイブ・ペニイズ)
2011年グッドデザイン賞受賞(街角遺産-The Local Heritage-)
2018年建築士会連合会 第10回まちづくり賞奨励賞受賞(街角遺産-The Local Heritage-)
2005年、陸路による半年間の欧州放浪を敢行。富山からフェリーでウラジオストックに渡り
シベリア鉄道に乗って渡欧。訪れた国22カ国、訪れた主要な建物・地域365ヵ所。
以後折を見てエジプト、モロッコ、アジア諸国、南米、キューバ、UAEなど
建築を巡る一人旅を続け学び続けている。

From1st. Labo. ACCESS.

株式会社フロムファースト・ラボ

〒761-8071香川県高松市伏石町2130番地5
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